活動概要

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2019年4月ジャパンフォーラム報告

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explorerか、builderか

 続くパネルディスカッションでは、トヨタの研究で知られる一橋大学大学院教授の大薗恵美氏も加わり、日本企業が抱える課題について活発な議論が行われた。最初にモデレーターの御立尚資氏は、「第四次産業革命下では製造業のウォーターフォール型開発と、ソフトウェアのアジャイル型開発の手法を融合できるかがカギになる」との見方を示した。

 この点について大薗氏は、「TRIやTRI-ADは日本の大手企業がシリコンバレー流のイノベーションを取り入れる上での一つの模範となる」と指摘。一方で「これまで日本企業でもPoC(概念実証)のプロジェクトは多数行われてきたが、その先になかなか進まなかった。だが5Gなど通信環境が整うと、これまで実現が難しかったアイデアも商品化できるようになる」として、経営トップの迅速な意思決定の重要性を強調した。

 カフナー氏もこれに同調。自身の体験を振り返り、「グーグルでは2~3週間でデューデリジェンス(企業価値評価)を終わらせ、スタートアップを買収していた」と述べた。

大薗氏は英語でのコミュニケーション力向上に関して、一橋大学ビジネススクールで取り入れているアプローチなども紹介した。

 リーダーシップに関してプラット氏は、トヨタでは経営陣がイノベーションの重要性を理解しているものの、「部長クラスにリスクをとるよう促すのはなかなか難しい」と新たな課題を指摘した。「発明やアイデアの源泉は、現場をよく知る中間管理職にあります。イノベーションを起こすには、彼らのリスクに対する意識を変えることが必要です」

 議論は人材論にも及んだ。プラット氏は、「explorer 対 builder」という考え方を紹介し、「新しい土地を発見するのが得意な人もいれば、そこに街を造るのが得意な人もいる」とと説明。日本について次のように語った。

 「アメリカ対日本という単純な図式ではなく、日本にも explorer 型の人材はたくさんいます。日本の歴史を振り返ると、いつの時代も企業家がリスクをとって新たなアイデアを実現してきたことがわかります。大切なのは自信をもつことです。日本にはAI社会に必要なすべてがあるのです」

ランチレセプションでのひとコマ。左か ら大薗氏、マネーフォワードCEOの辻庸介 氏、SVJPエグゼクティブ・ディレクターのケンタ・タカモリ氏

笑顔でポーズをとる東京海上ホールディングスの永野毅社長 (左)とカフナー氏。

SVJPアドバイザーの国谷裕子氏も昨年に引き続き参加。

金出武雄氏(中央)と談笑するNEC取締役執行役 員常務の西原基夫氏(左)と、同社執行役員 の藤川修氏(右)

 

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