活動概要

  1. コーポレート・プログラム
  2. ジャパンフォーラム

2019年4月ジャパンフォーラム報告

2019年4月24日に都内でジャパンフォーラムが開催された。2回目となる今回は、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI) CEO のギル プラット氏およびトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・ディベロップメント(TRI-AD) CEO のジェームス カフナー氏を基調講演演者としてお招きし、お話しいただいたのち、研究者としてトヨタに精通している一橋大学大学院経営管理研究科教授の大薗恵美氏を交え、パネルディスカッションを展開いただいた。

「トヨタ自動車の競争力を支えてきたのは、高性能のエンジンやトランスミッションを作る技術力です。ところが電気自動車が主流になると、そうした強みは一切無関係となります」

 基調講演で最初に登壇したTRIのCEO、ギル・プラット氏が語ったのは、トヨタの未来への危機感だった。

 自動車業界では現在、「コネクティビティ(接続性)」「自動運転」「共有」「電動化」という4つの大きな変化が起きている。さらに新車購入者は若い世代が多いため、今後先進各国で予測される人口の高齢化も逆風となる。トヨタの豊田章男社長は「100年に一度の大変革の時代」と捉えているという。

 この危機を乗り越えるため、2016年にシリコンバレーに設立されたのがTRIだ。同研究所ではAI、自動運転、ロボティクスの3つの領域に特化して研究・開発を行っている。この3つを選んだ理由について、「トヨタの強みであると同時に、高齢化社会のニーズに合致するから」とプラット氏。

 そして他社の失敗例などに触れつつ、「どんなに研究所で優れた発明をしても商品化されないと意味がない」として、研究開発部門と本社企画部門の橋渡しをするTRI-ADのような組織が必要だと話した。

 続いて登壇したTRI-ADのジェームス・カフナー氏は「未来の車はソフトウェアの塊」であり、日本のものづくりとシリコンバレーのイノベーションを融合させることが重要だとの立場を明らかにした。

 その一環として同社ではさまざまな「働き方改革」を取り入れている。たとえば、週1回の「TRI(トライ)タイム」には、社員は自分の担当業務ではない新しいプロジェクトに挑戦できる。また「ソフトウェア道場」では、専門家の指導のもと社員がスキルアップできる場を提供。さらに毎週金曜日は、仕事に集中できるように「ノー会議デー」と定めている。同氏は語る。

 「以前グーグルが行った調査で、生産性の高いチームは、互いへの敬意をもちつつも、本音で議論し、リスクを恐れずに挑戦できることがわかっています。そんなカルチャーを日本でも広めていきたいと考えています」

講演に熱心に耳を傾ける東日本旅客鉄道の小縣方樹取締役副会長。手前は、鈴与の鈴木健一郎社長。

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