活動概要

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2018年3月ジャパンフォーラム報告

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ヨーキー・マツオカ氏の基調講演

AIを活用したシリコンバレーを代表するIoT企業Nest

 同氏がCTOを務めるNestは、シリコンバレーを代表するIoT企業。とくに米国の家庭で一般的なサーモスタット(自動温度調節器)に革命をもたらしたことで知られる。AIを用いて室内温度を自動制御し、これまでに累計140億kWhの電力を節約することに成功した(約10億ドル相当)。たとえば子どもの送迎など短時間の外出なら温度設定は維持するが、仕事などで終日外出するなら電源を落とす。その判断をAIが下す。「人は生来怠け者なので、手動ではエネルギーを節約できません。マシンラーニング(機械学習)を使えば、快適さはそのままで電気代を抑えられます」とマツオカ氏。創業から約7年。サーモスタットを皮切りに防犯カメラやドアロック、煙感知器など12の家庭向けIoT製品を発表している。

マツオカ氏が考えるロボットやAIの存在

目指すのは、これらのデバイスが互いに連携し、各種センサーを通じて家の中の状態や住人の活動状況をより正確に把握できるようになることだ。「それがまさにIoTの醍醐味です」人間はAIによって管理されるようになるのか。マツオカ氏はこんな信念を口にした。「人とロボットやAIは切り離して考えることはできません。人には誰でも短所や弱みがある。そんな人間をなりたい自分に近づけてくれるのがロボットやAIです」

カーネギーメロン”マフィア”によるパネルディスカッション

左から、御立 尚資氏(ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー) / ヨーキー・マツオカ氏(Nest(ネスト)最高技術責任者CTO) / 金田 武雄氏(カーネギーメロン大学 ワイタカー冠全学教授) / 北野 宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所 代表取締役社長)

日本は欧米や中国に追いつけない?

北野氏はまず、AIを万能であるかのように捉える風潮に疑義を唱え、「ディープラーニング(深層学習)は万能ではなく、数学なので向き不向きがある。背後にある数学的原理や方程式を理解しないままデータを与えても、AIはうまく機能しない」と指摘した。そして欧米や中国の企業がAI分野に巨額の投資をする中、「サイバー空間のデータでは日本は圧倒的に負けているが、現実世界のデータは未開拓」だとして、IoT社会の到来で日本にもチャンスが訪れると語った。

日本独自ではなく、協働する姿勢を

一方、金出氏は「日本のソフト産業はダメだとは思わない。実際、カーネギーメロン大学に来る日本人留学生は負けていない」と主張。データについても「人が生きているかぎり蓄積されていく。日本が勝てないとは思っていない」と持論を展開した。むしろ金出氏は、日本人の競争意識の低さや内向き姿勢などを問題とし、「『オール・ジャパン』『日本独自』という考え方は非常に残念。初めから(海外企業と)協働するつもりがない。それでは絶対に勝てない」と警鐘を鳴らした。

イノベーションを創出するための経営者の責任

イノベーションを効果的に創出する方法についてもさまざまな意見が交わされた。マツオカ氏は「研究開発から商品化へと進む過程でほとんどのプロジェクトは『死の谷』に落ちる。でも技術者に両方の立場を経験させることで、そのリスクを軽減できる」と、シリコンバレー流の成功体験を紹介した。多岐にわたる問題提起の本質を鋭く指摘したのは、北野氏の次の言葉だろうか。「重要なのは経営者がテクノロジーを理解すること。これからの時代、トップが判断を誤ると取り返しのつかないことになります」

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