メガテック企業が医療分野へ参入
アップルウォッチを使って不整脈の一種である心房細動(AFib)を検知できるか――。2017年と18年、そんな奇想天外な実験「Apple Heart Study」をスタンフォード大学医科大学院とアップルが共同で行った。アップルウォッチには電気心拍センサーが内蔵されており、約8カ月間にわたる調査期間中、40万人以上のアップルウォッチのユーザーから心拍数のデータを収集。この史上最大のバーチャル実験によって、アップルウォッチが虚血性脳卒中の主な原因である心房細動のスクリーニング検査に役立つことが明らかになった。
スタンフォード大学医学部長のロイド・マイナー氏は、「アップルウォッチの研究は大成功だった」として、テクノロジーを用いた予防医療の可能性に期待感をにじませる。
「これまでは人の健康状態をリアルタイムで把握する方法はほとんどありませんでしたが、今後は不整脈だけでなく、血糖値などさまざまな生体データを24時間チェックできるようになるかもしれません」
ライフサイエンス領域におけるイノベーションは昨今、最も注目されているテーマの一つ。とくにスタンフォード大学は近年、シリコンバレーの大手テクノロジー企業と組んで、保健・医療分野におけるさまざまな新しい取り組みを牽引している。
上記アップルの研究とほぼ同時期に始まり現在も続いているのが、スタンフォード大学医学部がデューク大学医学部やグーグルの関連会社Verilyと行っている「Baseline Study」だ。こちらもウェアラブル端末を使った実験だが、特定の病気について研究するのではなく、血液や尿、唾液、涙などあらゆる生体データを解析し、健康な状態から病気になるベースライン(基準値)を解明することを目指している。2017年に始まったこのプロジェクトには約1万人が参加し、4年間かけて被験者の健康状態の変化を追跡調査してきた。
「治療で最も大切なのは早期発見と予防です。こうしたテクノロジーを活用することで病気の予兆を捉え、より優れたスクリーニング法の開発にもつなげることができます」とマイナー氏は言う。
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