「皆さんの中で『SHOE DOG』を読まれた方はいますか?」
ジョン・ドナホーCEOがオンライン画面越しに尋ねると、参加者のうち何名かの手が挙がった。
「なるほど、まだ読まれていない方もいるようですので、この本を私から皆さんへの宿題としましょう。なぜなら、『SHOE DOG』にはナイキと日本との大切な関わりが書かれてあるからです」
ドナホー氏は20分ほどのプレゼンの冒頭で、17名の参加者たちに笑顔でこう語りかけた。
ナイキの伝説的創業者であり、現名誉会長のフィル・ナイト氏が書いた自叙伝『SHOE DOG』(邦訳:東洋経済新報社刊)には、日本とナイキの深いつながりが克明に記されている。
ナイト氏はスタンフォード・ビジネススクール在学中に「日本のスポーツシューズメーカーは、カメラメーカー同様、ドイツに勝てるか?」をテーマに研究。卒業旅行で日本の神戸を訪れた際に、オニツカタイガー(現アシックス)の創業者である鬼塚喜八郎氏と面会し、米国における販売代理店契約を結んだ。それがナイキ誕生のきっかけとなったのは、スニーカーファンの間ではよく知られた話だ。
「オニツカ社との関係がなければ、今日のナイキはなかったでしょう」と、ドナホー氏は言い切る。
「ナイキは今でも日本のアートやデザインの影響を強く受けています。たとえば私が今いるオレゴン州の本社キャンパスは、施設のさまざまな場所に日本のデザインの影響が感じられます。また最近でもスポーツ文化振興のために、日本の靴デザイナーやアーティストたちとコラボしたりもしています」
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