2025年のジャパン・リトリートは5月24日 – 25日にリッツカールトン京都にて開催。
最新のAI事情、米国トランプ政権、長寿研究、また京都ならではの伝統工芸と最新テクノロジーなどについて、活発な議論を交わした。
セッションレポート
Session 1:金融サービスにおけるAI革命:先駆者たちの挑戦
日進月歩で進化するAI。いまや、その活用が企業の勝敗を分ける時代が到来しつつあるが、現場での実装にはさまざまなハードルが立ちはだかる。本年度のJapan Retreatの幕開けとなるセッション1では、米国防総省や大手金融機関などでAI活用を主導してきた、海兵隊出身のドリュー・クコー氏が登壇。自身の経験を交えながら、AIが世界をどう変革し、企業経営にどのような影響を及ぼすのかを語った。変化の波を乗り越えるため、経営者に求められる新たなリーダーシップとは―。

ドリュー・クコー氏 TWG Global 最高データ&アナリティクス責任者
Session 2:エイジングの未来:イノベーション、投資とインサイト
古来より、人類は「長寿」という夢を追い求めてきた。かつては空想の域を出なかったその願いも、近年の急速な科学技術の発展によって、にわかに現実味を帯びつつある。本セッションでは、老化治療の研究で注目すべき成果を挙げている京都大学准教授・近藤祥司氏と、長寿ビジネスへの投資に注力するアレックス・コルヴィル氏の両名が登壇。長寿をめぐる研究とビジネス、その最新の動きを第一線の専門家たちが語った。モデレーターは、経営コンサルタントであり京都大学大学院でも教鞭を執る御立尚資氏が務めた。

右から
アレックス・コルヴィル氏 age1 共同創業者・ジェネラルパートナー
近藤 祥司氏 京都大学医学部付属病院
高齢者医療ユニット長/地域ネットワーク医療部 准教授
モデレーター:御立 尚資 京都大学経営管理大学院 客員教授
Session 3:見えないものを見通す力:科学と精神の交差点
セッション3のテーマは「見えないものを見通す力」。モデレーターを務める妙心寺退蔵院の副住職・松山大耕氏は、黒澤明監督の映画の演出へのこだわりや、ベートーベンの交響曲第五番「運命」のスコアを例に、どんな分野でも偉業を成し遂げた人は「見えないもの」を大事にしているのではないかと語る。スピーカーである神戸大学数理・データサイエンスセンター教授の木村建次郎氏は、見えないものをどうすれば見えるようにできるかを突き詰め、ある方程式を導き出した。それを学問の世界にとどめることなく、実社会に応用し、さまざまな分野の問題解決に役立てている。

手前から
木村 建次郎氏 神戸大学 数理・データサイエンスセンター 教授
モデレーター: 松山 大耕氏 妙心寺退蔵院 副住職
Session 4:米国の政治情勢:政策、課題、そして展望
トランプ第二次政権が発足してから、米国の内政のみならず国際秩序も大きく揺らいでいる。混迷を深める「トランプ2.0」時代を読み解くカギはどこにあるのか。本セッションでは、米国先端政策研究所の上級研究員で日米関係に精通するグレン・S・フクシマ氏が米国政治の混乱の背景を分析。続いて、中国政治の専門家でジェームズタウン財団の会長を務めるピーター・マティス氏がオンラインで登壇し、トランプ政権の対外政策について論じた。モデレーターは、慶應義塾大学総合政策学部教授の神保謙氏が務めた。
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手前から
グレン・S・フクシマ氏
米国先端政策研究所 上級研究員
モデレーター: 神保 謙
慶應義塾大学総合政策学部 教授
公益財団法人国際文化会館 常務理事
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ピーター・マティス氏 ジェームズタウン財団 会長
Session 5:AI技術者による画期的研究と実世界への応用
生成AIブームが世界を席巻してから約2年半。その進化の速度は予測をはるかに上回り、研究・開発は新たなフェーズへと移行しつつある。本セッションでは、Google DeepMindで対話型AI「Gemini」の開発に携わるシェイン・グウ氏、スタンフォード大学で大規模言語モデルや強化学習を研究する橋本龍範氏、そしてハーバード大学で「知性の物理学」に挑む田中秀宣氏が登壇。AI開発の最前線に立つ3名が、それぞれの研究領域や今後の社会への影響などについて語り合った。モデレーターはAIスタートアップのRobust Intelligence(2024年10月に米Cisco Systemsが買収)の共同創業者である大柴行人氏が務めた。
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手前から
シェイン・グウ氏
Google DeepMind
シニアスタッフリサーチサイエンティスト
モデレーター: 大柴 行人
Robust Intelligence, Inc. 共同創業者 (Co-Founder)
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上から
田中 秀宣氏
ハーバード大学 CBS- NTT 知性物理学プログラム
NTT Research, Inc. 知性物理学グループ
リサーチサイエンティスト&グループリーダー
橋本 龍範氏
スタンフォード大学 コンピューターサイエンス学部 助教授
Session 6:カルチャー、創造性、そしてCEOのマインドセット
成熟した産業構造のなかで、いかにしてイノベーションを生み出すか。これは、多くの日本企業にとって共通の課題だろう。本セッションでは、スポーツ・エンタメ業界で四半世紀にわたりデジタルを軸にさまざまな収益モデルを構築してきたジェニファー・ヴァン・ダイク氏が登壇。企業を成長させる「見えない資産」としてのカルチャーや創造性の重要性を語った。モデレーターは、エンタメとテクノロジーの融合をリードするクリエイティブ業界のコンサルタント、シェリ・ブライアント氏。ヴァン・ダイク氏のキャリアをたどりながら、AI時代に経営者に求められる考え方を探った。

手前から
ジェニファー・ヴァン・ダイク氏 Superplastic CEO
モデレーター: シェリ・ブライアント氏 Emerging Technology Consultant and Advisor
Session 7:クラフトマンシップにおける伝統とテクノロジー
千年の古都であり日本の文化の根幹を支えてきた京都で、伝統工芸を継承し続ける3人の工芸家をスピーカーに迎え、伝統工芸を守りつつ、テクノロジーとの融合によるイノベーションへの取り組みについて話を聞いた。スピーカーは西陣織で知られる株式会社細尾代表取締役の細尾真孝氏、木桶作りの中川木工芸主宰・中川周士氏、宇治の茶陶・朝日焼十六世の松林豊斎氏。モデレーターはベンチャーキャピタリストでSVJPエグゼクティブ・コミッティの佐藤輝英氏が務めた。

右から
細尾 真孝氏 株式会社細尾 代表取締役社長
中川 周士氏 中川木工芸 主宰
松林 豊斎氏 朝日焼十六世
モデレーター: 佐藤 輝英 BEENEXT Capital Management Pte. Ltd. Founder & CEO
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