地球温暖化の原因となっている二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量の削減は、グローバルレベルで喫緊の課題となっている。
温室効果ガスの排出量を計算するツールやデータベースを開発・提供しているクリス・ジョーンズ氏は、地球温暖化の課題解決に向けて大きな変化を起こすには、個々人がコミットして互いに影響し合うことが重要だと個人での活動の重要性を主張した。
個々の状況や社会における立場によってその活動は異なる。そこで、同氏は、以下のように活動におけるレベルを5つに分けて、地球温暖化問題の解決に向けて個人や組織が社会に影響を与えるための具体的な方法について解説した。
個人レベル
個人レベルでの温室効果ガス削減のツールとして、同氏が開発したcool climate calculatorを活用する方法がある。このツールでは、自分が住んでいる地域や国、年収、消費した食べ物の量などを入力すれば、現在の自分の二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)が算出され目に見える形で把握できる。そこから二酸化炭素排出量削減の目標を達成するために実行する必要がある具体的な行動(食品の無駄を減らすなど)や取り組みを考え、実行することができる。
対人(インターパーソナル)レベル
対人レベルでは、例えば、温室効果ガス排出量を削減するために、個人や組織が環境対策や省エネルギー行動に影響を与える方法を議論するような国際会議であるBehavior, Energy and Climate Change Conference(BECC)やBECC Japanのような会議に参加することが挙げられる。それにより温室効果ガスを減らす組織や個人の取り組みを理解することができる。
組織レベル
組織レベルのイベントの一つに、Cool Campus Challengeという活動がある。これにカリフォルニア大学の10個のキャンパスが参加し、参加者は、温室効果ガス削減のためにどのように自分の行動を変えるか目標を持ち、それを互いに共有し、行動するというものだ。このようなイベントは人々のモチベーションを大きく向上させる結果が出ている。また、企業などの組織は、共通の目標を掲げてそれに向かって仲間とともに社会に貢献していくことができるすばらしい場所であり活動を進めやすい。
コミュニティレベル
都市部の総排出量の三分の一は地方自治体の関与が必要だ。同氏が主導しているEcoDataLabプロジェクトでは、産業やビジネスからの温室効果ガスの排出量データと消費レベル(世帯単位)の温室効果ガスの排出量データを提供している。そのデータを使うことで地方自治体ではデータの収集に時間を費やす必要はなくなり、政策の実行により多くの時間を費やすことができるようになる。結果、その地域に必要な建築基準や交通網などのインフラについて熟慮できるようになる。
政策レベル
2000年以降の二酸化炭素排出量の減少率において、カリフォルニア州は先駆的なエネルギー政策を有しているにもかかわらず、米国全体よりも非常に低い減少率となっている。カリフォルニア州のサステナビリティに関わる人材と資金の割り当て方法に大きな問題があることが原因の一つである。より効果的な政策とより良い割り当て方法を考え出すためには、イノベーション、テクノロジーおよびクリエイティブなアイディアを活用する必要がある。
最後に同氏は、「温室効果ガスの排出量を大きく削減するための大きな変化をもたらすためには、経済的な支援や人材を最大限に利用して新しいシステムを開発する必要がだ」と語り講演を締めくくった。