近年、大規模なサイバー攻撃によって社会や経済機能が停止するような事態がたびたび起きている。企業にとって、もはやセキュリティ対策は喫緊の課題だ。3月のエグゼクティブ・ラウンドテーブルでは、ランサムウェア攻撃に対するデータ保護・バックアップサービスで注目を集める米企業Rubrik(ルーブリック)のCEOであるビプル・シンハ氏が登壇。ロシア・ウクライナ情勢をめぐってさらに激化する「サイバー戦争」の最新動向や企業がとるべきセキュリティ対策などについて議論が交わされた。
あらゆる業界が標的に
「ランサムウェアは今日のグローバル経済における最大の脅威の一つです。つい数年前まで、サイバー攻撃はおもにコンピュータオタクが個人で『趣味』として行っていましたが、今日では北朝鮮のようにプロの技術者集団が『仕事』として他国の機密情報を盗み取ろうとしています。ハッカーによって重要な顧客データを奪われ、ダークウェブに公開されると、企業にとって一番大切なブランド(信用)が失墜します」
ビプル・シンハ氏はそう警告する。
ランサムウェアはパソコンなどに不正にアクセスして害を及ぼすマルウェアの一種。「ランサム(身代金)」と「(ソフト)ウェア」を掛け合わせた造語であり、重要なデータを盗み出し、身代金を要求するやっかいなコンピュータ犯罪だ。コロナ禍で業務のデジタル化やリモートワークへの移行が進むなか、ランサムウェア攻撃の被害件数も急増している。
とくに大きな変化は、「大手IT企業だけでなく、中小企業も含め、あらゆる業界がサイバー攻撃の標的になっていることだ」と、シンハ氏は言う。2021年にランサムウェア攻撃を受けた米石油大手コロニアル・パイプラインがハッカーに暗号通貨で440万ドル(約4億8000万円)の「身代金」を支払った事件は記憶に新しい。
また直近では今年3月にトヨタ自動車の取引先部品メーカーの1社がサイバー攻撃を受け、トヨタの国内14工場のすべてが操業停止に陥った。ロシアによるウクライナ侵攻に対する欧米諸国や日本による制裁が打ち出された直後の出来事とあって、ロシア政府による関与が疑われている。
「ランサムウェア攻撃は、もはや一企業だけでなく、民主主義国家にとっての脅威です。このような脅威を放置しておくわけにはいきません」と、シンハ氏は言う。
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