ジェリー・ヤン氏は自らを「世界で最も幸福な人間の一人」だと語る。
「台湾で生まれ育ち、70年代に英語教師だった母に連れられて、米国に移住しました。台湾では男子の徴兵制度があり、また当時は米国が中国との国交正常化に動き出していたため、台湾は国際社会から取り残され、まもなく中国との間で戦争が起きるかもしれないと言われていました。そこでシングルマザーの母は、私と弟を連れて渡米したのです」
カリフォルニア州サンノゼに移った当初はまったく英語のできなかったヤン氏だが、すぐに学業で頭角を現し、名門スタンフォード大学へ進学。そこで後にヤフー共同創業者となるデイビッド・ファイル氏と出会ったことが、起業家人生につながるきっかけとなる。
ヤン氏とファイル氏の二人は修士号を取得後の1992年に京都の「スタンフォード日本センター」へ半年間留学。日本での思い出について、ヤン氏は「僕らは相撲に夢中になった」と笑う。最初のサーバーは、ハワイ出身の名力士にちなんで「小錦」「曙」と名付けたという。ヤン氏が妻、山崎晶子氏に出会ったのもこのセンターに留学中の頃だ。
このように「ヤフーの始まりは日本と深い関わりがあった」と話すヤン氏。米国に帰国後の1995年、ヤン氏とファイル氏は趣味で作っていたウェブディレクトリサービスを事業化し、ヤフーを創業。そして孫正義氏(現ソフトバンクグループ会長)などから出資を受け、1年後にNASDAQに株式を公開した。「前年の売上は100万ドルほどだったのに、上場するとたちまち数億ドルの時価総額を記録したのです。とても信じられない気分でした」
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